絶叫機械

造形する脚本家、麻草郁のブログ。

久しぶりに会ったよ。

路地裏の三叉路で待ち合わせ。
夕陽があたりを照らして、何だかみんな色が同じ。
気がつくと彼が向かいに立っていた。
彼はシャツにセーターなんて着てる、もうすっかり暖かくなったっていうのに。
久しぶりに会えた私は、うれしくて彼に抱きついた。
彼は嫌がらずに笑ってくれた。
ずっと夕方が続いている町で、私たちは懐かしい思い出の話をした。
たくさん話をした、どこかに入って酒を飲もうと言いながら、私たちはずっと立って話した。
「そろそろ行かないと」と彼が言った。
「そんな定番のセリフ」と私が答えた。
「わかってないなぁ、麻草さん、こういうのは決まりが大事なんだ」と彼。
 いつもそうやって、私をたしなめた彼を、私は大好きだった。
「もっと話そう、いろいろ知り合いができたんだ、きみに紹介したいひとが沢山」
私は涙をこらえるために、大きくまばたきをした。
目をあけると、彼は消えていた。
町はまだ、夕方のままだった。