1970-01-01から1年間の記事一覧
ワルシャワ労働歌【作詞】スヴェンツキー 【ロシア語訳詞】KRZHIZHANOVSKIJ GLEB MAKSIMILIANOVICH 【日本語訳詞】鹿地 亘 暴虐の雲 光をおおい 敵の嵐は 吹きすさぶ ひるまず進め 我らが友よ 敵の鉄鎖をうち砕け 自由の火柱輝かしく 頭上高く燃え立ちぬ 今…
その時、その瞬間にわかっていることは驚くほど少ない。 そう、例えば名前、この僕を僕として知るための名前。今僕が知っているのは僕があの女教師を角材で殴り殺してしまったということ。 殴り殺したその女教師と僕には関係があったということ。 殺人はくだ…
彼と彼女は、エレベーターから部屋に行く間に何がいるのかも気づかないほど興奮していた。二人は気がつくとベッドの上に裸で寝て、巨大な青黒い性器が、濡れて開いた陰部に入るのを感じていた。 彼女の前方にある、鏡張りの天井が、ゆるやかに波打ちながら目…
拳を堅く握りしめて壁に打ち付ける事で心の平静を取り戻そうとした。 私の視界が狭まり脳の内部が奇妙に歪む。 怒りは発作のように思考を循環させた。 息子が殺人者であることを知ったのは三日前のことだ。 十六才中学三年生男子学校女性教諭殺撲殺逃亡潜伏…
窓のそとから甘い香りを感じて、鮫島はゆっくりと身を起こした。 夜明け前の薄曇りが空を覆っていた。 少し離れた大通りを通り過ぎる貨物運搬車の静かな響き、その響きが木枠で囲われたガラス窓を揺らし、四畳半の部屋中を小さな鈴の音で満たした。 天井から…
気を失っていたのか眠っていたのか判別のつかぬ闇の中から彼女が抜け出すとそこはまだ狭い箱の中に違いなくやがて不愉快な揺れに頭蓋を振られながら痛む関節をのばそうと考えては学校と家の間に横たわる巨大な屍骸の肋骨に降る雪を思い出してその願いを打ち…
「ヴァああオヴぇヴぁヴおぉぁあああああぃぃぃぃ」 ラジオからの声に耳を澄ませていると東の空からひとすじの電波がやってくる。 そう、あれは神のしもべ、私達を救う。 どんなに遠くても助けに来てくれる。 どうしてあの時僕は助けてあげられなかったんだ…
灌木の隙を抜ける蛇のように、鮫島の身体が床上をすべった。 火を噴く独製の鉄器を握りながら現れた黒衣の集団は"さめじま"という偽名を持つこの美しい生き物には気づいていなかった。 破壊すべき対象としての"眼鏡をかけた中年男性"を探すその目共には、黒…
バンだかドカンだか、大きな音がドアの方から聞こえて、ブーンって音がするから振り向いたら、右腕が肩の下からなくなった。ぼくは疑っていたけれど、死ぬ寸前は時間が長く感じるってのは本当だね。ゆっくりとリノリウムの床に向かってぶんぶん回転しながら…
俺の死に様を記録しておいて欲しい、即死でもかまわない、どうして俺が死んだのか、死因を記録して欲しい。たとえばお前が俺に押しあてているその冷たい拳銃で殺されるのなら、銃口から押し出された銃弾が俺の額の皮を灼き捻り切り骨を削り脳細胞のひとつひ…
「今夜はよい月が出ているね」 そう言うと、しばらく待ってから、あいつは手にした鎖を強くたぐりあたしに返答を要求した。あたしは返答を拒んだのではなく、たださっきあいつが吐いたものがあたしの口内には溜まっていて、口をひらくとあたしも吐いてしまい…
「眠い眠い眠い眠い眠いあまり眠いので目が覚めた。僕は夕陽が部屋を橙色に染める様を見たくて××××錠をどんぶり一杯も飲んだのではない、不愉快なキモチが額から鼻の横を通って口にすべりこんだ。毛布の端から2本の足がこっちをのぞいている、自分の足だ、…
許されない命というものがあったとして人にその命を絶つ権利があるのだろうかと鮫島は自分に問いかけまた目の前の椅子にガムテープで固定され死を待つばかりとなった男のこめかみを手にした中国産の星印のついた人を殺す事のできる炸薬によって鉛の塊を自ら…
少女の薄い腰を分厚い男の掌が掴んで離さない。 小さな薄い壁でできた箱の中で彼女は話さない。 女子中学生という記号的存在がこの社会で形骸的な意味しか持たなくなってからも彼女はそれに対する意味を考えた事が無いというそれだけの根拠をもとにその商売…
「貴方の望むものは何?」 お母さん、僕は今、広い荒野をただひとり走っています。 背後の空がだんだんと紺から紫へとかわっていきますので、朝が近いのだろうと思います。 聞こえますか、聞こえますか?この通信を聞いている、世界の全ての人に祈りを。 あ…