絶叫機械

造形する脚本家、麻草郁のブログ。

今更ですが、脚本を書く仕事をさせていただいております。

 舞台『ラフィン〜笑いの免許証〜』の思い出を書きます。笑うことが禁止された近未来、50年前の過去からその未来を変えるために一人の少女が送り込まれる……原案は一つの言葉「笑いの免許証」。プロデューサーだったレイモンさんが放った一言でした。原案を渡されたら考えるのは脚本家の役目です。笑うことに免許が必要なら、笑いを生むものはすべて禁止されているだろう、落語なんてもってのほかだ! それに、そんな未来は管理社会に違いないから学校も軍隊のように規律正しいに違いない……と演繹的に生まれた物語の中でレイモンさんが欲したのは「その子が来たことですべてが裏返るような出来事」でした。縛りはそれだけですから、過去から未来へ旅を続けていく悲劇のヒロインにすべてを託して物語は進みます。滅んだはずの伝説の落語、その最後の噺家が遺した隠れ弟子、そしてしりとりで相手を洗脳していく謎の教師……親の財力にものを言わせて笑いの免許証を買った大金持ちの前生徒会長焔乃火や、自分を律するがゆえに他者にも厳しい生徒会長千歳麒麟など、生徒会長キャラにも多様性をつけられたのが面白い経験にもなりました。以前から渇望していた『しりとり洗脳シーン』の実現、そして空前絶後のスローモーション落語……演劇だけに許された異様な空間は、観た人の心にどう届いたのでしょうか。
 主題歌をあらためて聴き、彼の遺した舞台作品に関われたことを誇りに思います。