絶叫機械

造形する脚本家、麻草郁のブログ。

かまねこ

 宮沢賢治の「猫の事務所」に、かまの中で寝てススだらけの猫が出てくる。ススだらけで、のろまで、いじめられる。
 土用に生まれたかまねこは、皮が薄いから夜は寒くてかまの中じゃなきゃ寝ていられない。
 かまねこは、涙を目にいっぱいためて、仕方ないなあと思う。

 ぼくは湿気に弱い。湿気がたまると、頭がガンガンするし、体が重くなるし、ずっとあくびばかりしている。
 6月に生まれたぼくは、自分の誕生日が近づくと、頭が痛くて、じつにつらい。
 子供のころは、ずっと自分が、かまねこみたいだと思っていた。

 けれど、今のぼくは、かまねこのようにいじめられちゃいないし、薬を飲めば痛みだってどうにかなる。
 それに、生まれたことを喜んでくれたひとだって、いないわけじゃない。
 ありがとう、ぼくはすっかり自分の誕生日など忘れて、昨日の夜も仕事をしていたんだよ。
 ああ、さいきんはうれしいことが多いなあ。