絶叫機械

造形する脚本家、麻草郁のブログ。

あとがきのあとがき

 脚本家にとって、完成した舞台を見るのは何とも奇妙な出来事です。ときにはボロボロに汚された我が子を見るような悲しい気持ちになることもあります。ふさぎ込んでいた私にできるのは、新しい脚本を書くことだけでした。そして時が流れ、舞台の本番前のゲネプロの座席へと私は座っていました。怖かった、何もできず自分の分身が目の前で切り刻まれたショックから抜け出すことができなかった。すると、舞台の中から桃太郎が叫んでくれました「助けに行くぞ!」
 桃太郎だけではありませんでした。ひとつひとつのセリフが、演者を通して私の胸に届き、心を打ちました。それはまるで自分の頭では考えつかないようなセリフに思えました。きっと演者のひとりひとりがその役を、その瞬間を役として生きてくれたからだと私は思います。私は改めて自分の選んだ道を生きることができるようになりました、その道は細く、両側は崖で、私は高所恐怖症です。でも、その先には光があるんだと桃太郎たちが教えてくれました。
「迷ってる奴の背中を押していいのは、そいつが信頼している奴だけだ!」
「あなたはロバではありません!」
「私の力をすべて使いなさい!」
 ありがとう、使います、あなたの力を使って物語を作ります。
「わしゃ、血と悲鳴のするところならどこでもいいわい!」
「よっしゃ付いて来いや!」
 本当にありがとう。