絶叫機械

造形する脚本家、麻草郁のブログ。

『桃太郎外伝〜黄金の夜明け』

『桃太郎外伝〜黄金の夜明け』無事に千穐楽を迎えることができました。パンフレットに載せた「ごあいさつ」を転載しますので、よろしければご覧ください。

ごあいさつ

若さとはなんでしょうか、振り向かないことでしょうか。ぼくは、若さといえば、抑えきれない小さな欲望のことを思い出します。イライラして、やりきれなくて、爆発寸前のくせに、少しのガス抜きで台無しになってしまう、安っぽい欲望。
やがてその欲望には名前がついて、ぼくたちはそれを手にいれたり、あきらめたりする。パーティは終わった、ピンク色の朝焼けを隠すようにカーテンをしめて眠ろう。
でもぼくはまだ、パーティが終わったような気が、しないのです。

このお話は、かなりぶっとんだ設定のファンタジーです。過去や現代を行ったり来たりしますし、コメディ、アクション、ダンス、歌と内容も盛りだくさんで、登場人物もおとぎ話から神話から、しまいには妖怪まで、たくさん出てきます。
まるでパーティのようなこの世界に、みなさんが迷い込み、その中に生きている不思議な人々のことを、少しだけおぼえていてくれたら、ぼくは嬉しい。

あとは、お話について少しだけ。
ぼくは子供の頃から怪獣映画が好きでした。画面の中で暴れるゴジラガメラ、そして彼らの原点であるキングコング、そしてフランケンシュタインの怪物…物言わぬ彼らの姿に畏れと憧れ、そして哀しみを見ました。
今回の主人公金太郎は、怪物です。竜と人の間に生まれ、山で育ち、軍にスカウトされて鬼を殺した過去を持つ、異界人です。
そんな金太郎を、平和な世界へ引き止めるのが、熊野小十郎です。弱くて、強がりで、逃げてばかりの、へっぴり腰で夢見がちな悲観論者。
彼らは過去にとらわれ、今を見失います。
そこにもう一人の怪物ラスプーチンが現れ、全人生を賭けて問いかけます。過去か未来か、どちらかを選べ、と。
答えは……
ぼくにそれが、本当に正しい事なのかどうかは、わかりません。でも、そうするしかない、と思っています。
たくさんの物語が教えてくれたように、そうするしかない時に、どんなに苦しくても、怖くても、やるんです。何の力も持たない人間にできることは、限られているけど。それでも。

この作品を作る機会を与えてくださったプロデューサー、共に素晴らしい作品を作り上げてくれたスタッフさんたち、さらには舞台の血肉となって汗をかいてくれた出演者、そして観客のみなさん、すべてに感謝します。

脚本・演出 麻草郁