リップクリームラプソディ
唇の皮がべろべろ剥けるので、リップクリームを買った。この類のものは買ったことがなく、何がいいのかわからないままドラッグストアへ行くと、ジンジャーマンゴーの香りというおいしそうな売り文句のリップクリームがあった。
Kiss My Face リップクリーム SPF15 <ジンジャーマンゴー> 0.15oz (4.25g)
- 出版社/メーカー: Kiss My Face
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そんな思いを抱えたまま近所のコンビニへ行くと、無香料を売りにしているリップクリームを発見した。確かに食い物が通過する場所であるところの唇に、においの強い油を塗るのはおかしな話だった。まず食べ物ではないのに食べ物の匂いがしているというだけでおれには意味がわからない。食べるか塗るか。ひび割れた唇でラーメンをすすり豚油でコーティングするか、オシャレにリップクリームを塗って餓死するか。無香料であればそのような悲劇は起こりえない。ただ単なる無味無臭の油ということであれば、ただのワセリンでいいのではないか? とも思ったが、スティックタイプであること、いますぐ塗りたいこと、リップクリームぶりたいこと(ワセリンではまるでボクサーではないか)等々の事情が重なり、おれはニベアのリップクリームを買ったのだ。
- 出版社/メーカー: 花王グループカスタマーマーケティング株式会社
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- 出版社/メーカー: ロート製薬株式会社
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仕方なくおれはマンゴージンジャーに手をのばす、薬用に比べれば甘いその香りにおれは少しの安心感を取り戻す。唇はまだ剥けたまま、小さくとがった角がいくつも唇の丘陵地帯に生えている、上下の唇をこすればその棘はまるでおれを責めるように鳴り続ける、かりかり、かりかり、かり。
そして思い出す、あの無香料リップの優しさを、ひかえめでおとなしいあのただの油っぷりを。また会いたい、そして唇をやさしく触れ合わせ、時には激しく押し付けるように、塗りたくりたい。むせかえるようなマンゴーの香りに、おれは涙した。