絶叫機械

造形する脚本家、麻草郁のブログ。

ここからが海。

水底にいて、誰かが手にしたライトで文字を書くのを見ている。
誰かは文字を書きながら浮かんでいってしまう。
まわりはごつごつした岩で、幅は10メートルほど。深さは20メートルぐらいだ。
向きを変えて、前に進む。
しばらく泳ぐと、岩にびっしりついた貝、長い長い海藻たちが見えるようになる。
足元を海草がなでる。
上でゆれる光、行く手には壁。
視界いっぱいに広がった壁の少し手前で、水面にあがる。
ここは、暗渠の端。
大きな格子の向こうは青空。
波の音が聞こえる。
海ではなかった、海に似た、なにか別の場所にぼくはいた。
すぐ隣に海があるのに、コンクリートの壁で隔てられたここは、よどんだ藻のにおいがする。
でも、ぼくには、ここからが海だ。
とぷん、と水に沈む。