絶叫機械

造形する脚本家、麻草郁のブログ。

ガンガンふりかえれ。

空中キャンプさんの「2007年の映画を振り返る」に参加するぜ!といっても驚くほど劇場で映画を見ていないので選ぶまでもないぜ!
http://d.hatena.ne.jp/zoot32/20071212

1位 ブラックブック

 バーホーベン!バーホーベン!バーホーベン!(異世界への扉が開く呪文)母国に帰ってやりたい放題!のバーホーベンおじさん。友達と見に行って、隣の席にロマンスグレーの紳士とその奥方が座っていたのが心配だったんスが、旦那の方がおれらと同じところで「よし!」みたいな反応するので、それを感じながらおれらも「よし!」みたいな。
 パンフレット(ケースに入ったリーフレットみたいなもので、裏面がロビーカード仕立てになっており、非常に購買意欲をそそられた)を読むと(いまちょっと手元にないのでうろおぼえだが)、アメリカで活躍していた頃のバーホーベンは、英語の微妙なニュアンスとかが面倒くさくて、かなり乱暴な演出をしていたらしい。どうりでシャワーシーンで自分から裸になってみたりしたわけだ、説明するより早いし。そんなバーホーベンが母国語で演出をすると……どうなるかは観たひとなら一目瞭然、観てないひとは今すぐレンタル屋に行くべし。まあとにかくすごい、ブレーキが壊れているというかなんというか、そもそもブレーキがないというか。
「泣ける映画」には、泣かせるためのズルい方法がある。それは、観客の記憶から類似の事例を引っ張り出して泣かせる、というテクニックだ。もちろん、それが目的の映画もあるので一概には言えないが、できれば映画は「見たことのないもの」を観せてほしい。そういう意味で「ブラック・ブック」は2007年最高の映画だと思う。土手に停まった車がゆれている、手前に座った二人は振り向かない、やがて静寂が訪れる。そんな風景は見たことがなかった。

2位 300

 前述の友達と観に行ったら友達側には三人の男(ジージャンズ)がいて、おれの隣にはカップル(非ジージャンズ)が座ってて、映画が始める前にカップルの男が「古代ギリシアの政治ってのはね……」なんてうぜえ蘊蓄垂れてたんだけど、戦闘シーン(セリフなし)でおれらが「おお!」とか「シャ!」とか反応してたらカップルの男の方から「うるせえよ」って言われてびっくりした。ごめんねえ、そんで友達側のボンクラーズもそれが聞こえたのか、しばらくおとなしくしてたんだけど、やっぱ興奮するじゃん、それで結局5人で「シャ!」とか「よし!」みたいな反応してて、最後のスタッフロールで「原作者:フランク・ミラー」って出たときに「イェア!」って叫んだら隣のカップルが席を立った。
 たとえば歴史としてのプロレスを語るなら、戦後力道山が活躍する姿には「敗戦」の影が重くのしかかっていた民衆の姿を想像するわけで、しかも人種的な背景を考えればさらに話は複雑になっていくと思う(深町さんが書いてた感じで)。一方には「酒呑んで暴れる力道山」「後輩イジメの力道山」みたいな話もあって、考えれば考えるほど面白い。そんな力道山を、おれらはセピア色のフィルム越しに写る過去の景色に見る。
 じゃあ、いま目の前に力道山がいるとしてだよ、空手チョップで戦っているその現場に居合わせたらどうする?腕組んで「戦後虐げられた民衆が」とか言う?いや、きみは静かに見ているのかもしれない。ごめん、おれはたぶん最前列に猛突進して「リキーッ!」って叫んでると思うんだ。
 そんな映画。

3位 トランスフォーマー

 これは別の友達と行ったんだけど、久々に(良い意味で)「途中でトイレに立てる映画」だった。主人公の家にメガネを取りに帰るシーンで「あ、ここは大丈夫だな」って直感が働いて、素直にトイレに行けた。戻ってきたら案の定同じシーン。ちょうどヒロインが顔を出して、母親が「あらまあ」なんつってるとこだった。まともに映画として考えたら、そんなとこは削ってクライマックスに振り分けるべきなんだけど(そしておれは尿意を我慢すべきなんだけど)、監督はそれをしない(し、おれも尿意を我慢しない)。別に語るべきことなんてないんだろう、見せたいものと見たいものがあるだけだ。といっても、本当に吹っ飛んでビルに刺さる車、爆薬に追いかけられて必死で走る俳優、ビルの屋上で怖い目に遭う主人公、全部本物だってのに、本編じゃまったく活かされてない。そういう意味でメイキング映像は必見、むしろ本編より面白いと言っても過言ではないくらいだ。

来年はもっと劇場に行こう。

 DVDでフォローできるようになっても、劇場ってのはいいもんで、今回「劇場で見た」ことにこだわったのは、「SF映画二本立て」ではないけれども、レイトショーに行こうね、後ろの席で見ようね、といった感じのことを言いたいからである。みんなで見たいのだ。あと、これだけはちゃんと書いておきたいのだが、たまたま友達と見に行った三本を選んだだけで、おれは一人で行ってもつねに前のめりなので、全然知らないひととでも、同じ場面で「よし!」と思いたい。
追記
全然フォーマットに従ってなかったので、書き直したものを置いておくぜ!

1. 名前/性別 麻草郁/男
2. 作品名 「ブラック・ブック」「300」トランスフォーマー
3. シーン 「ブラック・ブック」の土手で一休みしているところ。
4. 役者 いろいろな意味でトランスフォーマーに出てた俳優たち。
5. 一言 来年はもっと劇場で映画を見たい。