人食いの魔女
むかしむかし、南の方に、人食いの魔女がいた。
子供をさらっては食う、おそろしい魔女だった。
うわさによれば、自分の美しさをたもつために子供の肝を食っていたらしい。それが、まったく効き目がないどころか、食えば食うほど醜くなった。目は飛び出て、爪はとがり、歯は牙に、肌は紙やすりのようにガサガサの灰色になってしまった。それでも「子供の肝を食えば若く美しくいられる」と信じた魔女は、やがて気が狂った。
あるとき、肝を食うことで醜くなることに気づいた狂った人食いの魔女は、意味もなく子供をさらっては、肝以外の部分を食うことにした。
手足を食われた子供は、いつまでも死なないので、苦しみ続けた。
魔女の屋敷には地下牢があった。何層にも及ぶ地下牢には、それぞれの部屋に五人ずつ、約三百人の子供が、手足をちぎられたまま閉じ込められていた。
あるとき、旅の騎士がそのうわさを聞き、魔女を倒そうと屋敷へ向かったが、そこに魔女の姿はなかった。いぶかしんだ騎士が地下へ向かうと、むっとするような腐った血のにおいが騎士を襲った。牢につながれた手足のちぎれた子供たちを見た騎士は義憤にかられたが、魔女はどこにもいないので子供たちを助けることにした。
地下牢から出すと子供たちは全員死んだ。魔女は子供たちを魔力で生きながらえさせていたのだ。
魔女が屋敷に帰ると、屋敷は焼かれ、子供たちは一人もいなかった。仕方がないので子供を捜しに町へ出ると、大人たちが全員魔女のように子供を食べていた。