絶叫機械

造形する脚本家、麻草郁のブログ。

デッサンてなあ便利な言葉のように見えましてね。

Amazonキム・ヒョンテ画集のレビューより。セカイは広いなあ。どうも絵描きらしいんだけど、この人の考える「デッサン」を知りたい。
http://d.hatena.ne.jp/kanose/20060728/kim

 この記事を見て、マンガにおけるデッサンて何なのかを考えてみよう、と検証画像を作ったんだけど、なんか詳しく説明しなくても見たらわかると思ったよ。デッサン、つまりこの場合は立体としての構造の破綻は、ある場面において確実に起こっています。でもそれでいいんじゃないですか。なぜなら同じ画面上で物体の移動を表現するためには、意図的にデッサンを狂わせる必要があるからです。
検証用に使ったのはここの画像です。横たわった絵なのに、こちらへ向かう視線を感じます、それはなぜか?

元画像  元画像から切り抜き。


輪郭線ごと左右反転  輪郭線のみ。

輪郭線を輪切りに。

 上方から見るとおそらくこう。で、元画像はどう見えるか。 

 頭蓋骨、顔面、目線がそれぞれ別の方向を向くことで、画面右側(元画像の場合、右下側)への力が発生することがわかります。というわけで、マンガ絵、つまり動きの必要とされる絵にはデッサンの狂いが必要な場合があります。みなさんも、デッサンが狂っている、狂っていない、という瑣末なことで絵の価値を決めたりしないように気をつけてください。
追記:トレース線がズレているのでは?という指摘をいただいたので、確認のために大きめの画像を用意しました。ご確認下さい。




目の位置と、口の向き、鼻の向きがそれぞれ斜め上、斜め前、正面、と変えてあるのがわかるかと思われます。もう一回書きます、みなさんも、デッサンが狂っている、狂っていない、という瑣末なことで絵の価値を決めたりしないように気をつけてください。何がそこに表現されていて、そこから何が読み取れるのか?というのが、絵の価値というものです。
追記:
ブックマークのコメント欄から。

立体としての再現性というよりか、人間の立体認識のフレームワークにがっちり噛み合わせて意図通りの効果を与える能力ってところなのかな?

 すばらしい。人間の目は立体視なので、実は物体を複数のアングルで見ているのですね、だから普段見ているものを映像で見ると違って見えたり、テレビに出ているひとを実際に見ると違って見えたりするのです。マンガ的なデッサンのゆがみというものは、立体を平面上で再現するための方法なのです。ま、やりすぎるとキュビスムになってしまいますが。
[asin:4757720955:detail]
関連エントリ
マンガの絵がうまいとはどういうことか。
http://d.hatena.ne.jp/screammachine/20061014#p2
君がマンガを描くときに気をつけなきゃならない事
http://d.hatena.ne.jp/screammachine/20070322#p1