絶叫機械

造形する脚本家、麻草郁のブログ。

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scr::プロット × 100

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慈愛(N)
庇護(N) 信頼(R) 誓約(N) 調和(R)
生命(N)

 地球の周りを取り囲むリングワールドで生活している樋口は、リングの外壁を管理する仕事について三年目のブルーカラーだ。
 生来の方向音痴が災いして、出世の道は閉ざされていた。
 働いていればいつか内壁の向こうにある地球へ行けるという噂もあるが、最近は信じていない。
 この時代、地球との連絡方法は失われ、外壁に住む者たちの間では、リングのフチから懐かしき地球を眺め、そのまま落下していく自殺方法が流行していた。
 慈愛にあふれる北極教の支部長(スクリーン越し)は「信じれば、いつか迎えが来るのです」と勇気付けてくれるが、正直外壁を横断して死のうかと思うこともしばしばだ。
 ある日、樋口は酒に酔い、大暴れして職を失ってしまう。しかも恋する女には手ひどくふられ、長年申請していた公営団地の入居も断られて、もはや残された道は死ぬことしかなかった。
 外壁を横断する樋口、しかし方向音痴が災いし、なぜかリングの中へと迷い込んでしまう。リングの中を通り抜けるうちに、居住区を過ぎ、内壁へとたどり着く樋口。
 内壁にたどり着いた樋口は、そこにあるものを目にして涙を流す。それはもはや、地球ではなかった。リングへ資源を供給しつくした地球は単なる岩塊へと姿を変えていたのだ。絶望した樋口は地球の残骸へ飛ぼうとする、しかしリングの遠心力は強く、樋口は跳びたてない。
 今まで地球へ落ちようとリングのフチへ行った者たちも、同じものを見たのだろう。そしてリングのフチから宇宙の彼方まで飛んでいったのだ。
 樋口は泣きながら出口を探した。だが、方向音痴の樋口には、外壁へ向かう出口は、いつまでも見つけられないのだった。