絶叫機械

造形する脚本家、麻草郁のブログ。

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映画刑務所にはフォームがつけてあって、感想などを送ってもらえるようになっている。
まあ月に1通がいいとこで、たまに送られてくるとうれしい(ちゃんと読んでいます!)。まあ返信先がないので返事は出せないのだけれども…。
そんな中、一通の批判が送られてきた。

頭突きとパンチの腰が入ってないです。 あと、大炎上ってどの部分だったんでしょうか? 花火だったら夏になれば普通に子供がやってます。

 たぶん『冷凍庫炎上』への感想なのだと思う。子供が冷凍庫の中で花火をするのが普通ってのは、どのあたりの風習なんだろう、という冗談は置いて、この手の批判について考えたい。このメールを送った方は、腰が入っていて冷凍庫花火というタイトルだったら満足してくれたのだろうか。たとえば、腰の入ったパンチと頭突きで氷を砕く男、タイトルは『冷凍庫花火』だとすれば、それはもはや別の作品である(…それはそれで面白い気がしてきた)。いやいや、本当に不快感を感じたのはそこなのだろうか、と問題定義をしてみたい。
 ずっと考えているのはそこなのだ。作品への批判を書くときに、ぼくたちは何か見落としてはいないだろうか。なぜその作品に対して批判をしようと思ったのだろうか?批判のための論理を構築するときに、本当の不快感は見落とされてやしないだろうか?ぼくは深く考えてしまうのだ。

オレが2ちゃんが嫌いなのはこのタイプのセンスに満ちている所と、それを正論とする同好が『そうだよね?そうだよね?』って言い合い、反対意見を「ネタにマジレスかっこ悪い」とか言いながら次第にネタじゃなくて本気になっていく気色の悪さがあるから。
id:samurai_kung_fu:20041208

 いわゆるオタクの会話が引用で成り立ってしまう場合も、そこに含まれるだろう。ぼくたちは間違ったまま生きることに慣れてはいない、自分が正しい側であると確認しなければ、耐えられない。同好の士を探しながら『そうだよね?』と確認しないと、怖くて映画の感想も書けない。
 だけどそれは間違いだ、2ch的な自己正当化の連鎖は何も生み出さない。
 長い道のりだった、ここに宣言しよう、ぼくは『スカイキャプテン ワールド・オブ・トゥモロー』みたいな、オタクが成長しないまま作っちゃった子供向け内容の実写映画モドキが大好きです。「こんなもの映画ではない」と言われてしまうような映画が好きです。薄っぺらな造形のキャラクターが引用もとの定かなストーリーラインの上を整列して進み、変な加工がしてあったり合成ラインがバレバレだったり全部のシーンで紗がかかっていたり、借用元が全部わかるパクリだったりギャグがすべっていたりする、人生に何の影響も与えない、映画の歴史を一歩も前に進ませない懐古趣味のゴミと呼ばれるような映画が、大好きです。こういう活劇が二ヶ月に一本くらい作られたらいいのに。一回500円で見られたらいいのに。
 空っぽなものは、役にたたない、確かにその通りだ。
 テーマも主張も、何も伝わらない、ただ欲求だけを満たすハードコアポルノ。
 ぼくはそういうのも好きなんだ。