絶叫機械

造形する脚本家、麻草郁のブログ。

「占い」じゃなくて「占わない」という職業を考えた。
何を聞かれても当たり前のことしか言わない。「占わない」から。

俺「じゃあ、生年月日を教えてください
 客「あ、はい、1976年の、6月23日です」
俺「あー、なるほどねー」
 客「えっ?何かわかったんですか?早いなあ」
俺「ええ、27才なんだなぁ、って」
 客「それ当たり前ですよね、しかも年、間違えてるし」
俺「ああ(指折り数えて)26さ」
 客「28です!何で減るんですか?変な計算してませんか?」
俺「…すみません……」
 客「いいですけど……」
俺「悩みとか、あるでしょう」
 客「そりゃ、ありますけど」
俺「解決……」
 客「解決できるんですか?」
俺「できるように……前向きに善処したい……」
 客「あいまいだなあ」
俺「手のひらを見せてください」
 客「おっ、手相ですか(片手を出す)」
俺「いや、両手をこう、顔の横に」
 客「こうですか?」
俺「『わあ、びっくりした』ってね、アハハ」
 客「ハァ?からかってんですか?」
俺「わかりました」
 客「え?」
俺「交通事故に気をつけた方がいいですよ」
 客「ほお、何かそういう卦が出ていますか」
俺「いや、別に……車とか、飛び出したら、危ないし……」
 客「そりゃ、危ないときもありますけど、気をつけてますよ?」
俺「あああ、あと、水を使う仕事してます?」
 客「水?」
俺「職場に水場があるとか……」
 客「ああ、キッチンはありますね」
俺「湯沸かし器から熱湯が出るかもしれません」
 客「そりゃ危険ですね」
俺「そういう風景が見えます……わたしの頭の中に……」
 客「おお、霊視ですか、それっぽいなあ」
俺「この前、やけどしたんです」
 客「って自分の話ですかよ!そりゃあ大変でしたねえ!気をつけてください!」
俺「いえいえそれほどでも」
 客「ぼくはねえ、占ってほしいんだ!」
俺「はぁ?」
 客「占いだと思って、座ったのに、占ってくださいよ!」
俺「いや、だっておれ、占わないから…」
 客「(『占わない』の看板を見て)あーっ……間違えた……」
俺「まあまあ、占いなんてどうせ当たらないから」
 客「それはあんたの占いが当たらないだけでしょう?だから客だって来ないんだよ」
俺「何だと!」
 客「ええ?怒るの?だって占わないんでしょう」
俺「そうじゃなくて、客が来ないってところ!」
 客「いや、そりゃ見ればわかるし……」
俺「見ただけで?だまって座ればピタリと当てるのか!?そうなのか?」
 客「そうなのか、って言われてもな」
俺「占ってください」
 客「占わないんじゃないの?」
俺「占ってほしいんです、大家と俺の相性とか」
 客「大家?アパートか何かに住んでるんですか」
俺「ええ、最近ちょっと仲が悪くって」
 客「大家と?」
俺「そうなんです、ちょっと家賃を滞納したら口をきいてくれなくなって、口を開けばすぐに家賃払え、家賃払えーって」
 客「いや、普通はそうでしょう」
俺「どうすればいいんですか?!」
 客「知らないよ!家賃払ったらどうです?」
俺「それができれば苦労しないよ!ああ、やっぱり占いなんて当てにならないなあ」
 客「今のは占いじゃなくて一般論だよ!占い師にあやまんなさいよ」
俺「いや、いいんです、占いはよくないです、健康に悪いですよ?」
 客「え?」
俺「占いで大変なことになってますから、オゾン層とか」
 客「オゾン層は関係ないでしょう、占いとは」
俺「あなたが占いを信じるたびに!地球のどこかでひとが死ぬんだ!」
 客「おおげさだな!死にませんよ!」
俺「平和な世界は、嫌いですか?」
 客「えっ……いや、平和、いいと思いますけど」
俺「そうですよね、じゃあこの壷を買ってください」
 客「買うと、平和になるんですか?」
俺「ええ、大家と私の関係が」
 客「何きれいにまとめたつもりになってるんですか!もういいです!」

ていうね。