絶叫機械

造形する脚本家、麻草郁のブログ。

SPUN感想

頭っからいこう、ただただ好きなシーンを挙げるだけ。
冒頭、ボルボでスパイダーの家前まで来たロスのモノローグ。
「(覚醒剤の俗名をダラダラ挙げて)全部メタンフェタミンの別名だ。切れたので、買いに来た」(うろおぼえ)
説明これだけ、あとは一切なし。さいこう。

続けてテンパった面々のギチギチした行動がドン引きとみっちりしたクロースアップの繰り返しで表現される。早く欲しいだけのロス、ブツをなくしてテンパってるスパイダー、楽しくなっちゃってるニッキー、クッキー、プレステで2D格闘(おそらく映画オリジナルの猿が戦うゲーム)を遊ぶフリスビー。

中頃、おそらくヘロインをきめたロスとクッキーニッキースパイダーが寝転がりながらニヤニヤするところが思い出すと泣ける、ちょう泣ける。

フリスビーの家にマレット刑事とムスタシュ刑事が突入するシーンはなぜか突然80年代刑事ドラマ風。爆笑してしまう。

ラスベガスにニッキーを送るロス、上物を連続でキメながら深夜の道路を走る。交錯する会話、フラッシュバック、連続して明滅する「シートベルトを締めろ」警告。普通の映画表現なら、警告がカットバックしたら、その後事故が起こるけど、ラリ映画では事故は起こらない。ラリると、気にしていることが、集中していることと同じくらいの大きさで、感じられる。このシーンは最高のバッドトリップだった。

ラスト前。
恋焦がれていたエイミーにとうとう会えることになったロス、ソワソワと公園をウロウロ、向こうからドレスを来た美人が!
ドレス?あぁ?スローモーション!ソフトフォーカス!
あー…ロスって本当に大馬鹿……ヘラヘラしてる。
「またラリって(SPUN)るの?」
「ラリってないよ!(ドンギマリ)」
ここからの展開がすごく好きなんだけれども。
何の説明もなく運転を代わっているコック。助手席でぶっ倒れているロス。物語としては「しょんぼりして帰ってきたロス」「運転席で動けないロス」「しょうがねえな、と運転を代わるコック」「助手席で愚痴るロス」という部分がバッサリ切ってあるんだけど、それが気持ちいい。

感想
ボンクラ兄さんの贖罪に涙。
「おれが死ねばいいんだろ?」って逆ギレっぽいけど、そういう意思の力が煮えて溶けた脳にひびくのでした。