絶叫機械

造形する脚本家、麻草郁のブログ。

歯が痛くて眠れないのだ。

 頭のアンテナが鈍っているといいう恐怖が最近の一番の不安であった。世間の出来事にたいしても何かの作品を見ても感想を言うなどというだいそれたことをする余裕もないというしかない。自らのこの数年間を顧みて、他のジャンルとの親和性が低すぎるのではないか、ニッチに寄りすぎて過去の友人との交流も少なくなってしまったし、私はいったい何のために生きているのかわからないような状況が続いていた、そこにこの歯痛である。もはや逃げ道はない。
 表題にある通りだ、夜中の三時に歯が痛くて目が覚めて眠れない。鎮痛剤も睡眠導入剤も何も効かない、ただひたすらに右の奥歯が痛い。突然の疼痛だ、何の対処も仕様がない、どうすればいいのかわからない。とにかく眠れないのだ。こんな時何にでも効く薬があればいいのにと思う、もちろんそんなものはない、手もとにもないしこの世のどこかにあるとしてもだいたい違法だし。朝まで待てばいいものをこの時間に目覚めさせるなんて何かに陰謀に違いない。明日の朝からやっている歯医者に行って、おそらく膿のたまっている奥歯を抜いてもらいたい、エナメル質を砕いて中の膿を吸い出して神経を焼いてすっきりしたい。これまでも悪くなった奥歯はあらかたなくなってしまった、それでも喋れているのだから大したものだ。歯がすべてそろっていたらどれだけの言葉をしっかり喋れていたのだろう、私はもう喋るのが怖くなってしまった。書いても書いても痛みが薄れることはない、歯が痛い。間抜けだ、大間抜けだ、歯が痛くなっていから歯医者を探すのだ、間抜けの一言としか言いようがない。
 毎日磨いているし、治療だってしていた、なぜ今になって急に奥歯が痛み出すのかわからない。免疫が落ちているのかと不安になる、このまま全部の生きている歯が無くなって神経を焼いた歯のようなものを口の中にしまうだけの生活も悪くないかと思う。それより心配なのは金だ、痛みを止めてほしいのに「気長に治療しましょうね」などと言われたらあの便利な椅子の中でおれは「うう」とうなって泣き出すかもしれない、これからいくらかかるのかわからない、歯は磨いているのだ、毎日嫌になるほど磨いているのだ。過去の治療痕が膿んでいるいるわけでもないらしい、写真を撮るとツルツルと美しい歯が見える、この歯の奥で何が起こっているのか何もわからない、不安で仕方ない。
 久しぶりに会った人に「元気がないですね」と言われた。元気など昔からない、あるならばそれは空元気というやつだ、もう無理だ、歯が痛い。