絶叫機械

造形する脚本家、麻草郁のブログ。

くさったせかい

 秋葉原に行ったら同行者がどうしても行きたいというので「とらの穴」に連れて行かれた。えーと、腐ってる方のとら穴。私はそのとき、むさい服にぼうぼうの武将ヒゲ。伸ばしっぱなしの蓬髪も含めて、どこからどう見ても落ち武者だった。
 フロアにつくと、同行者はジャンプ系の棚を見て頭に「?」を浮かべた。
「アイシがない」
 なるほど、確かに「アイシールド21」を題材にした同人誌が見当たらない。銀玉、ディグレ、ネウロにワンピ、果ては大蔵に至るまで網羅する腐の世界に、ヘルメットの姿がない。
「たぶん、すごいキチガイが怒って暴れたりしたんだよ」
 と私が適当なことを言うと、同行者は「もしかしたら人気がないのかな」と寂しそうな顔でうつむいた。そんな悲しむことでもないと思うが。私は棚を見た。ありとあらゆるマンガ、ゲーム、その外すべてがピンク色のもやに包まれている。私はそこで一冊の本に目をとめた、タイトルは『生クリームのベッド』とある。甘い名前だ、表紙には生クリームに濡れた宏海と裸エプロンの悠がって私は何を書いているんだろうか。何か脳のいけない部分を侵略された気がした、そうだ、あれは十年前、ゲームセンターで知り合った友達とコミケに行ったときに立ち寄った電気グルーヴ系サークルで知った蜜の味。それから私はしばらく腐った世界に足を踏み入れていたのだ。
 買ってしまった。読んだ。そうだ、ヤマもオチもイミもない、だがそこには原作へのファックな精神があふれている。原作をファックしている(文字通り)。私はやっぱりこの世界が好きだったのだ。ヒゲを剃って、髪を切ろう、そして体重を10年前に戻そう、10年で10キロ増えた。あの頃は馬鹿だった、そして私はもっとファックだった。
http://www.toranoana.jp/mailorder/article/04/0010/11/54/040010115457.html
 しかし何でアイシールドの同人誌はないんだろうか。ふしぎだ。