絶叫機械

造形する脚本家、麻草郁のブログ。

『ダーウィンの悪夢』公開間近。タンザニアから抗議。

 柳下毅一郎さんの日記で紹介されてから、ずっと気になっていた作品が公開される。

これはもはや映画としてどうこうというレベルではなく、写っている現実が凄すぎる。「地獄」としか呼びようがないのです。
http://www.ltokyo.com/yanasita/diary/05101.html

 NHK-BSで何度か放送されたらしいが、あいにく見られる環境になかった。というのは言い訳で、どうしても見たければフィルムを借りるなり何なりと手はあった。金も暇もないという言い訳は最低のたぐいで、私はそういう中途半端な興味の持ち方をする下衆な人間だということがわかる。
 その作品に、タンザニア大使が抗議した。

今年の米アカデミー賞長編ドキュメンタリー賞にノミネートされた仏豪合作映画「ダーウィンの悪夢」(フーベルト・ザウパー監督)の23日公開をめぐって、タンザニア連合共和国特命全権大使が抗議していることが5日、分かった。同作はアフリカ最大の湖・ビクトリア湖に、巨大な肉食魚が放たれたことから、地域経済が潤う一方で貧困、売春、エイズ、湖の環境悪化などの惨劇が連鎖する姿を描いたもの。大使は配給会社を訪れ、公開はアフリカのイメージダウンになると訴えている。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20061206-00000055-sph-ent
http://d.hatena.ne.jp/./m4n4/より)

 私が食べている白身の魚、安いパンにはさまれ、安い油で揚げられたあの魚。ボイコットしたやつらは馬鹿かブルジョワで、ボンヤリ食べている私にはタンザニア大使の悲痛な叫びが聞こえない。アフリカは、十三〜十五世紀に巨大建築を作るほどの文明がありながらヨーロッパに蹂躙された悲劇の大陸というイメージが強く、ダーウィンの悪夢がまさにそれで、ヘイトグローバリズムの盛り上がりは感じても、アフリカのイメージが劣化することはない。どこのどんな国だって同じ目にあったら同じように荒廃するだろう。むしろ今まさにここがそうではないか。
 見た方がいい、隣近所の出来事として。下衆な私が言うのだから間違いない。
公式サイトはこちら。
http://www.darwin-movie.jp/
追記:参照
タンザニア現地の観光会社から『ダーウィンの悪夢』について。
http://jatatours.intafrica.com/habari47.html
http://jatatours.intafrica.com/habari49.html
 私は旅行自体が苦手なので身勝手な物言いになるが、もし『ダーゥインの悪夢』を観てアフリカに行くのをやめるひとが身近にいたら、そんな馬鹿な理由でやめることはないと説得したい。なぜ『ダーゥインの悪夢』が映画になるかといえば、それの扱うものがつまびらかにされていないからである。観光客が直面する場所にそれがあるなら、事実であれ誇張であれ捏造であれ、映画にする価値はないだろう。日本にだって観光客が足を踏み入れてはならない場所など掃いて捨てるほどある。