絶叫機械

造形する脚本家、麻草郁のブログ。

空には鳥、世界には意味が。

 昨日書いたトリは歩くとき、なぜ首を前後させるのか。に対するid:nekoprotocolさんのコメント

世界には意味がありすぎる。すごいよ世界。

 というのがひどく私には感動的で、ああ、私はそうやって世界の意味を――この場合は「おそらくこうだろうという理由」か――知りたいし、わかりたい、そして皆とその知識を共有したいのだな、と確認させられた。
 先日、上司から「細胞ってのは、自分で自分を食い殺すんだろ」と、何の前置きもなく言われたので眩暈がした。普段はそのようなことに興味のあるひとではない。彼はNHKの特番を見たのだと言った。
「死ぬ時期が近づくと、細胞は自分から死んでいくんだってな」
 「テロメア、ですかね、遺伝子には死ぬ時期がプログラムされているんだそうです」
「何で死ぬんだろうな」
 「それは、癌細胞の増殖を抑えるためだとか」
「そうか。ずっと生きてたら、人間ってのはどういう精神状態になるのかな」
 「死なないなら文明は発達しないでしょうね」
「ふんふん」
 「それに、進化だって起こらないでしょう、私たちは原始のスープに漂う単細胞のままです」
「生物って面白いなあ」
 くだらないことかもしれない、ちょっとだけ気になって、それで忘れてしまう。ひとつのことをやりとげる能力を持ったひとから見れば、知識のつまみ食い、ほんのお遊び。けれど、私はこの会話が楽しかったし、それは、いつもの上司が口にする政治家の悪口や仕事の愚痴なんかよりも、もっと豊かで優しいことに思えた。
 上司の母親は癌で亡くなっていた。そのことを二人とも口にしなかった。