絶叫機械

造形する脚本家、麻草郁のブログ。

占わないQ&A

mixiで「占わない」というコミュをやっているので、そのコミュで書いたことを転載するコーナー。
Q:姓名判断で、相性ってわかりますか?中国式なので当たるそうです。
A:姓名判断というのは、最近になって作られた占いです。
 熊崎健翁というひとが、易学をもとに作り上げ、明治から昭和にかけて流行らせたのが、最初らしいです。
 易学をもとに、といってもほとんどオリジナルで、なぜ当たるのか、という説明は、四柱推命と同じで、陰陽五行思想をもとにしています。
 ですから、中国式というのは日本から中国に逆輸入されたものなのか、もしくは「陰陽五行だから中国式」といった誤解によるものかもしれません。
 なんにせよ、姓名判断というものは陰陽五行思想をもとに作られました。つまり、世界は陰と陽に分けられ、さらに木火土金水の五行に分類できるのだ、という考え方です。
 これは古代ギリシャの自然哲学者エンペドクレスが考えた原子論に近いものです。彼は四種類の原始、土、空気、火、水が世界のすべてを形作っていると考えました。たとえば骨は火、土、水の原子がそれぞれ4:2:2の比率で混ざったものだとか。
 現代の原子論では、原子はもっと細かいものであり、火は変化する状態をあらわすといったことがわかっています。むかしのひとがそれに気づかなかったのは、人間には身の丈のことしか直感では理解できないからです。
 占いというものは、むかしのひとが考えた、身の丈のことを全て説明するための道具でした。
 かげ、ひなた、木、火、土、金、水、といったものは、人間が目で見て触って、直感で区別のつくものです。
 世界はたった七つの何かで説明できるものでしょうか?もちろん、自然界には基本的な四つの力、重力 電磁気力 弱い力 強い力、しかありません。ですが、それはただ「それがある」ということだけであって、人との相性なんかとは、あまり関係がないのです。『ルールズオブアトラクション』(引力の法則)という恋愛映画がありましたが、それは比喩表現というやつです。
 だから、姓名判断も、誰かとの相性はわからないのです。
Q:相性は当てにならないってのはわかったけど、運勢なら当たるんじゃない?
A:まず、運勢というもの自体に、疑いを持ってはどうですか。
 つまり、運勢が良いか悪いかではなく、
 運勢とは何か?と考えるのです。
「運勢」を辞書で調べると
・人の持っている幸運・不運の巡り合わせ。
 と出てきます。
 では、幸運、不運とは何か。
 人間は、他の多くの哺乳類と同じように、これから起こる出来事を想像し、予測することができる生き物です。
 それらを予想できるのは、過去の出来事を記憶しているから。
 たとえば、段差でつまずいたことがあれば、段差をさけます。
 熱い鍋にさわらないのは、火傷をすると知っているから。
 同じ電話番号に電話をかけるのは、そこにかければ同じ相手が出ると予測するからです。
 幸運、不運とは、起こった出来事の原因がわからないときに、とりあえずその原因をわかった気になるための、方便なのです。
 原因がわかれば、そこには幸運も不運もありません。同じ電話番号に電話をかけて、同じ相手が出るのは幸運ではありません。
 さて、そこで「運勢」に話を戻します。
 運というものが、周りの物事との関係性を指すならば、それは「周りの物事との相性」であると言えます。
 つまり、人と人との相性占いが当てにならないように、運勢の予測も当てにはならないのです。