絶叫機械

造形する脚本家、麻草郁のブログ。

ショウほど素敵な商売はない……わけではない。

 映画『プロデューサーズ』を観て、映画『アメリカンドリームズ』の予告編を観ると、あまりの気持ちよさに、調子に乗ってはいけねえな、ということを思い出す。二つの作品に通低しているのは「ショウほど素敵な商売はない」という例のアレだ。
 自主映画を観てるのは自主映画を作っている奴だけだ、なんてこともよく言われる。それは、自主映画を作らない者にとって「自主映画」は「クォリティの低い映画」でしかないからだ。作ってる人間の気持ち良さってのは、作品のクオリティが低ければ不快感しか生まないものだ。
 ではクォリティが高ければ、快感は自然に生まれるのか。
 そうではない。
 いくら作品の精度が高くても「無条件の正義」は「無条件の抵抗」を生む。どこかのエンターティナーが、無邪気な顔で「ショウほど素敵な商売はありませんね」と言うとき、誰かが吐き気をガマンしている。
 もちろんそんなのは、作る側が気にすることじゃない。その映画を待っているひとたちに、最高の作品を届けてくれればいい(観客には作品を選択する権利がある)。だけど観る側がヘラヘラ笑っていていいものか。感想を求めている誰かに向かって、涎を流しながら自分の性癖を押し付けるのは、下品な行いではないか。ネットで感想を書く者としての責任は、そこにあるのかもしれない。
 ほんとうに伝えたいなら、拳を振り上げろ。戦いを挑め。
プロデューサーズ』は気持ちの良い映画だった。そして『アメリカンドリームズ』の予告編はそれだけで涙を流しそうになるほどだ。だけど、忘れちゃならねえ、世の中には「映画はひとを変える」と考えるだけで吐き気をもよおすひとがいる。そんな誰かに映画の面白さを伝えられたら本望なのだけど。
アメリカンドリームズ』予告編
http://www.themoviebox.net/movies/2006/0-9ABC/American-Dreamz/trailer.php
id:TomoMachi:20060422#seemore)