絶叫機械

造形する脚本家、麻草郁のブログ。

真面目な感想

 むかしは(ぼくが行ってた頃は)知ってる曲や知ってるDJだけ盛り上がるのは格好悪いこととされていて、それはなぜかというとクラブ文化圏の人間*1は「ちょっと普通のひととは違うところに自分たちの特権的な階級意識」を持っていたからなのだというのは言い過ぎにしても、卓球やフミヤが流行り出した(まさに流行り出した!)当時、リキッドで前列に座ってフミヤの出番を待つ10代の娘さんたちは物笑いの種だった。そこまで自虐的にならなくてもいいか*2、単純に踊る邪魔だったのだ。そんでドクデスの6回目だったかな、サカイさンをDJに呼んだとき、同じことが起こったのだ。サカイさンの前がミニマルのDJだったのも原因のひとつだったとは思うんだけど、童貞ジョイフルサカイさン目当てで来ていた男たちが体育座りでサカイさンの出番を待っていたんですよ、フロアの真ん中で。これは目を覆わんばかりの惨劇、地獄絵図、だってフロアってのは踊る場所だし、流れているのは踊るための曲なんだもの。
 ただ、そこでぼくは「踊れお前ら」と言う気持ちにはなったけど、何も言えなかった。だって、彼らは踊りに来たんじゃない、サカイさンがかける曲を聴きに来たんだって思ったから。でもそれは間違いだった、ぼくは「踊らないならどいてね」と言うべきだったんだ。
 というわけでサカイさン主催の『屑デス』なわけですよお立会い!主催者自ら「次は映像が凝っているので皆さん座ってください」「踊れる曲を選んだので是非立ってほしい!」「次は腐女子コーナーなので女子の方は前列へ」と観客を誘導(するようにおれに頼む)。つまりこれは「見たいもの+見せましょう(&じゃなくて+)」なのです。だって言えば伝わるもの、動くな!死ね!蘇れ!
 ね?テンション配分とか、ジャンル配置とか、まだまだ考えるべきことはたくさんあるかもしれないけど、こんなにもわかりやすいイベントってあるだろうか?アニソンで踊るイベント、ゲーム音楽で踊るイベントは数あれど、フロアで何をすればいいか教えてくれるイベントなんて他にねえよ?「次はあなたの好きなジャンルですから前の方にどうぞ」なんて言ってくれるイベント、屑デスだけですよ!だから、そこに価値を見出せないと「何だかヌルいオタクのイベントだな*3」って感想で終わってしまうと思う。それはとても勿体無いことだ。
 これからは「踊れお前ら」じゃなくて「座れお前ら」がイベントの面白さを作り出すのだろう。どうでもいいけど「座れお前ら」じゃこれから説教するみたいですね。おわり。

*1:

*2:自分たちを特権的な地位に置いて「誰かが決めたバカにしていい相手」を笑うというのは、とてもみっともない間抜けな行為だと思う。バカにしていい相手を笑って、何がおかしいのか

*3: ぼくは冗談ではない場面で「オタク」というカテゴリに何でもつめこんでものを考えるのが嫌だ。サブカルもオタクもアングラも、あいまいなぼんやりとした名前でしかない。カテゴライズなんてものは、それで食い扶持を稼ぐひと(文化人類学者とか?)や、面白ことを思いつくひとだけがそれについて考えればいいと思う(ディスコ=宇宙みたいにid:gotanda6)。もちろん愚痴だって立派な芸にはなり得るけど、それは誤った理論で正当化を繰り返す羽目に陥る場合が多い。なぜならオタクなんてものは人種と同じで架空の分類だし、本気でいらついているひとは、きっとカテゴリじゃなくて個人の行動にいらついているだけだからだ。