絶叫機械

造形する脚本家、麻草郁のブログ。

演技の話。

id:Kuroeさんからのコメント

演技をしていると、カポっと精神が別世界に入っちゃって「いい演技」が出来る時』という所を、よろしければもう少し詳しく説明していただけませんでしょうか。演技中では無いのですが私も世界と自分についての認識がおかしくなることがちょいちょい有りまして…
でも自分の場合はあんまり楽しいものでもない上に何の前触れも無くやってくるのでやっぱり違うのかも知れません…うーん。

 具体的に言うと、見えているけど、見えていない、という状況になります。あとで思い出すと、見えていたものは確かに現実の風景なのに、そのときは自分の一部であったような……客席はあって、見えていたんだけど、その時はまったく気にならない。そんな感じです。「集中する」ということを意識しないで集中すると、エッシャーの騙し絵のように、舞台の世界へ意識が移行します。意識を保ったまま瞑想する、というのが近いかな。
 本当に入れたときは、小道具の位置が間違ってようが、相手が台詞を間違えようが、何の問題もなく対応できます。ぼくは、台詞のないやりとりなら、すぐに入れるんですが、対話台詞や、小道具の位置、などの「自分では制御できない何か」があると難しくなります。だから映画館で電話鳴らす奴は死ねって思いますけどもそれは余談。
 子供が集団でハイになっていたり、大人がパニック状況に陥ってる状況を、意図的に作り出す、というのが、演技には必要なのですね。でないと、客席は「舞台で何かを読んでいる変なひと」を見ることになってしまう。
 ぼくは医者ではないので、適当なことしか言えませんが「前触れもなくやってくる」というのは、集中を意識していないってこと、なのかもしれない。たとえば、嫌なものから逃げようとする、好きなものに近づこうとするとき、ひとは「さあ、今から近づくぞ」とは思わない。自動的に、からだが動くわけです。
 だから、もしそうなったら、意識は集中しちゃってるので、状況を楽しむか、意図せざるくだらないものに意識を向けて、脱出する、が良いと思います。意図せざるくだらないもの、というのは「集中した意識」とは関連のないものですね。
 
 重ね重ね書きますけど、ぼくは医者じゃないので、あくまで経験上の話です。

 あと、余談ですが、役者のひとには「台詞を入れる」というのを「暗記する」と間違って教えられているひとがいて、そういうひとは、何回稽古しても入れないので、大変です。声優さんに多いです、これも体験上。演出中に台詞を変えると「えー、せっかくおぼえたのに」なんて言いやがります。そう言うひとは、普段もおぼえた言葉を喋ってるだけなのかもしれませんね。あ、ひどいこと書いちゃった。