絶叫機械

造形する脚本家、麻草郁のブログ。

本日公開「イノセンス」レビュー

 試写会で観たときの感想です。内容についても触れているので消しておいたけど、なんかどこのサイトでもバリバリ内容について書いているので出す。前夜だけど出す。でもストーリーは追ってないので事前に見ても大丈夫だと思います。

試写会で観たときの感想

 で、読んだことを前提に書きますけれども、この乙女心というのは、重要だな、と思うわけです。乙女といえば純愛、セックスのない男女の恋愛関係を正当化するための全身サイボーグ化であったとしたら*1劇中で語られるハラウェイのサイボーグフェミニズムも表層だけをなぞったとは言えないのでは?家族を持っているトグサと、犬と暮らすバトーの対比を、監督の言うとおり「長いお別れ」の引用だから深い意味がないと済ますのは早計では?
 上の文を書いていて「イノセンスそれは乙女心」という改変コピーを思いつきました。イノセンスは乙女心を描く映画ではなく、乙女心があるゆえに感じる喪失感を描く映画だった、ということです。乙女心(イノセンス)は失われて想うもの、すでに身のうちから溢れる乙女心を失っているからこそ、僕たちは映画や物語や人にそれを求めるのかもしれません。リルケの「あらかじめうしなわれたこいびとよ」という詩を今思い出したので書きましたが意味があるのやらないのやら。

 はるのかぜ ゆれるおとめの イノセンス

 バトーがお花畑で犬とたわむれている映像をバックにボソボソと素子が詠むイメージ。
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逆リンク:http://d.hatena.ne.jp/gokudoh/20040306#p5
僕は顔ビームと乙女心でできています。

*1:映画「攻殻機動隊」において、素子に対する友情以上の感情を出していなかったバトーが、イノセンスでは異常なまでに素子依存をあらわにしている理由を説明するのに、サイボーグとしての共感を出すのは、単なる恋愛感情よりもよほど説得力のある設定です