絶叫機械

造形する脚本家、麻草郁のブログ。

やっつけ文章の魅力

 「ブレインドラッグ」の解説が、まさに「やっつけ感」のあるものだったので、読後の嫌な感じがいや増しになり、得した気持ちがした。
 アラングリンのような、邦訳が他にない、デビューしたての海外作家なんてのは、研究書もなければ詳細なレポートもないから、作品の分析が難しい。だから、プレスシートを頼りに、あらすじを書き、経歴を紹介したら、書くことがなくなる。そこで、文字稼ぎに出てくるのが「わくわくするではないか」や「さすが新人、と言ったところだろう」という感じの、独特の解説文体だ。
 B級映画のパンフレットなんて、こんな文体ばっかりだった。配るビデオがなかったり、作品が完成していなかったり、原稿依頼が早すぎたり、どこかが、抜けてたんだろう。映画「ヒルコ」のパンフレットに江戸木先生が書いてた「黒髪をなびかせる妖艶な沢田研二の姿が見えるようではないか」なんてのは、最高傑作の部類だ(本編では、沢田研二演じる稗田礼次郎は原作とは違い、短髪の情けない風貌を演じていた)。
 僕は、こういう文章を、バカにしているわけではない。本当に、好きなのだ。人間は追い詰められると、無意識の底からとんでもない表現を見つけ出したりする。言いたいことなど何もなくとも、書かねばならぬがライターだ。
 さすがプロの文字芸者、といったところだろう。