絶叫機械

造形する脚本家、麻草郁のブログ。

 妻は文鳥を飼っている。

 家に帰る途中、知人から白くて小さい猫を貰った、手のひらくらいの大きさで、細い手足を紙袋の中で突っ張らせていて可愛らしい。帰ると玄関で妻が「文鳥が逃げた」と言って私を責めた。妻が遊びに出ている間、私が文鳥に餌をやらなかったから逃げたのだと言う。文鳥は篭の蓋を開けて、家のどこかにいるらしい。気がつくと猫もいない。

 しばらく探していると、押入れの中で「フギャア」と声がした。押入れ一杯に詰まった紙の靴箱をどけると、文鳥と猫が絡み合って転がっている。文鳥は爪で猫を掴み、引き剥がすと私の手を噛んだ。猫は嘴で突っつかれて、穴だらけになっていた。

 文鳥を妻に渡し、猫を握ったまま机の引き出しを開け、軟膏の瓶を取り出した。輸入物の軟膏で、放っておいたせいか、えらく硬い。削り取った灰色の半透明な軟膏を、指で柔らかくしながら穴のような傷に塗った。

 猫はまだ、手のひらくらいだから文鳥にも勝てないのだ、もう少し大きくなれば文鳥を食うだろう。

 やがて指先で、粘土状だった軟膏が液状に変わった。