絶叫機械

造形する脚本家、麻草郁のブログ。

 そういえば、昔僕は「政治に関してはノーコメントをつらぬきます」と宣言して、それをひっくり返していたのだった。そういう誠実さの欠片もない人間は、野嵜氏のような真っ直ぐな人間が妬ましくて、こうやって話題に取り上げたくなってしまう。野嵜氏が僕のような馬鹿にからまれやすい理由は、そこにあると思う。

繰返すが、多くの人が、アメリカだけは許せない、と思ふ理由が、私には理解出來ない。
http://members.jcom.home.ne.jp/w3c/omake/diary.html

 反戦活動家や平和運動家がアメリカを非難するのは、アメリカの一国独裁が世界を支配するのに比べ、イラクの独裁政治が日本の政治に影響を与える可能性が、低く見えるからだろう。

アメリカが軍事支配をおしすすめれば、石油石炭ガスは堀り尽くされ、地球温暖化の研究は停止し、低燃料車の研究も停止し、裕福層へ向けての減税が発表され、中流層の医療保護は撤廃され、避妊は禁止され、医療費教育費は削減され、各国の内戦で細菌兵器が使用され、使用した国は全て爆撃される」と「反戦家」が考えるのは、アメリカが現にそのような政策を選んでいるからだ。

「多くの人が、アメリカだけは許せない、と思ふ理由」は、単なる知識の不足によるものだったり、情緒的な理由によるものだが、だからといってアメリカの一国独裁を看過して良いという結論に至るのは、性急に過ぎる。ドイツやフランスがイラク攻撃に反対するのは戦争が悪いからではなく、国際政治の中心を奪おうとするアメリカの魂胆が国際社会の枠組みを破壊するものだからだ。

 人は理解できない事象に対して一応の安心感を得るために「仮想敵」を作る。電波喫茶のママさんが「大家が電波を送るのよ!」と店に張り紙やアルミホイルを貼って近所の人に訴えるように、自分の身に降りかかる不幸の原因が不明であればあるほど外部にその原因を求める。そのような原因で生まれた情緒的な「戦争反対!」と、前述した理由による「イラク攻撃反対」を、同列に論じるのつもりがないのであれば「理解できない」などという皮肉を書くのは良くない。日本人の多くが仮想敵にアメリカ=ブッシュを選ぶのは、日本が戦争に負けた時に進駐したのがアメリカ軍だったからだし、ブッシュが目に見えて馬鹿に思えるからだ。誰だって自分の理解の範疇にある大義名分が欲しいのである。