絶叫機械

造形する脚本家、麻草郁のブログ。

『GoGo』 第九話 『Q防衛線』

「ヴァああオヴぇヴぁヴおぉぁあああああぃぃぃぃ」

 ラジオからの声に耳を澄ませていると東の空からひとすじの電波がやってくる。
 そう、あれは神のしもべ、私達を救う。
 どんなに遠くても助けに来てくれる。
 どうしてあの時僕は助けてあげられなかったんだろう
 君が前にかざしたてのひらとその指にひかる銀の指輪僕の降りあげた−
 角材が風を切る。
 橋の中程に隠れているとやがて自分が逃げていた事に思い至ります。
 手のひらの傷は埋まって消えてぽろぽろ剥がれてゆき−
 僕はそこに傷などないということを知る。
 天気予報で云っていた。
 明日は、はれるって

「すばらしいあさがきたきぼうのあさだ」

 昔の事は忘れましょう庭にお花を植えましょう
 恋をしましょう。

 どこか別の場所に逃げなさいってTVが云うので、
 TVはいつも正しいので、僕は云うことをきいてどこか遠くへ。
 角材が風を切る逃げた先に川があってああここを彼女はわたったのだろうなと思いました。
 でも深くて沈んだ。僕はわたれなかったのです。
 クラスのみんなはお元気ですか、お身体に気をつけて。
 僕は大丈夫。
 大丈夫だからといったのに、彼女は僕に薬を飲めという。
 薬を飲まないとだめだという。彼女は僕の母親でした、恋人でした、娘でした、僕でした。
 空高く捻れてゆく鳩を追いかけて公園まで来ますと僕を見て指をさして笑いますから僕の握った角材が風を切る。
 花をつむ少女、花輪、かりん、かリン。
 白いかけらがぐつぐつあふれる鍋から覗いてそのまわりに黒い髪の毛、黒い髪の毛がみっしりと。