絶叫機械

造形する脚本家、麻草郁のブログ。

『GoGo』 第六話

 俺の死に様を記録しておいて欲しい、即死でもかまわない、どうして俺が死んだのか、死因を記録して欲しい。たとえばお前が俺に押しあてているその冷たい拳銃で殺されるのなら、銃口から押し出された銃弾が俺の額の皮を灼き捻り切り骨を削り脳細胞のひとつひとつを押し潰しながら頭蓋骨の内圧を上げて後頭部の骨を砕き俺の記憶のいくつかを道連れに後ろの壁と激突する様を、うつろに開いた後ろの穴からこぼれ出す俺の薄汚れた桃灰色の思想を、破壊された神経細胞からの悲劇的な信号を受け取って脱糞し射精し痙攣している俺の体を記録して欲しい。たとえばお前がその華奢な手に犀のペニスの様にねじくれた縄を掴んで俺を縊り殺してくれるのなら、引き絞られる縄が俺の首に食い込んでいくうちに赤黒く染まり膨れ上がる俺の貌を、その上に浮かぶ幾筋もの血管を、しっかりと縄で紅白に色分けされた首を擦れ破れた皮から滲みる血を、記録して欲しい。

 俺は死にたくなかったしこれからも死にたくはないけれどどうせ死ぬのならそれくらいの事は頼みたい。お前がそんなささやかな願いも聞き届けてはくれない人間であることはこの3時間でしっかりと学んだから、これは殺される前のおれの密かなお遊びで、それでどうなることもない決定している俺の死に対する俺のおそれを中和してくれる。そしてお前は俺が誰なのかも知らないまま俺を殺すんだろう、かわいそうな娘。死ぬ覚悟なんてものはなるべくならするものじゃない、俺がここでこうしている間にも本部では俺の救出作戦と銘打った破壊作戦が進行し、俺の救出部隊と銘打った暗殺部隊が結成され、やがてここに硝煙と臓物の臭いが蔓延するだろう。そしておれは英雄として「彼の死を忘れることなく我々は」死ぬんだ死ぬんだ死ぬんだ死ぬんだ死ぬんだ死ぬんだ俺は死ぬ。