絶叫機械

造形する脚本家、麻草郁のブログ。

『GoGo』 第三話 『理解』

 許されない命というものがあったとして人にその命を絶つ権利があるのだろうかと鮫島は自分に問いかけまた目の前の椅子にガムテープで固定され死を待つばかりとなった男のこめかみを手にした中国産の星印のついた人を殺す事のできる炸薬によって鉛の塊を自らの胎内より残酷で抜け目のないうすらさむいだけの外界へと送り出す機構を持ったそれ以外に用途のない器械で左から右へと撫であげながら問いかけたが、憐れにも鼻腔と耳の穴のみを残し顔面の記号という記号をガムテープで隠されたこの小便を垂れ流す為にうまれてきた男はその問いに答える事はできず、無論答えなど期待していない鮫島は男の唸り声に満足そうに頷いてその少女を思わせる顔面を俗に言うほほえみに包んだまま蛍光灯に照らされて隅々にこびりついた茶色の粘着物まではっきりと確認できるコンクリートでできた四角くて狭いこの地下室の扉の前に立つ冗談に出てくるギャングの格好をした男へと視線を移し同じ質問を平岡に伝えるように指示して部屋から追い出した。

 鮫島は右手に掴んだこの不恰好な鉄の器械が自分の細く滑らかな陶器の質感を持った指の一本一本にこそ相応しいものだと考えていてそれに気づかない平岡が下品なアメリカ製の鏡のように磨かれた鉄製の銃身と象牙の持ち手に彫刻の入った「鍛えられたボディビルダーのよく締まる肛門に抽送される為に創られたディルドー」を贈ってくる事の美意識のなさになかば呆れながらその愚かさをいとおしく思っていた。

 今は椅子に貼り付けられ自発的に死ぬ事さえ出来ないこの男が何をして何をしなかったのかを鮫島は知らないし知ろうとも思わないが知ることができないというそれだけの事実には若干の苛立ちを感じていた。

 その苛立ちが原動力になってつまりあたしの慰安の為にあなたは死ぬがそのことをあなたは知っているのかとふたたび鮫島は答える事のできない肉の塊のに嘘と思いつきを織り交ぜて囁いた。

 男は勃起していた。