『トゥモロー・ワールド』が見せたもの、既に失われたすべて。
冒頭、爆弾によって破壊された店から、フラフラと女が歩き出る。聞こえる叫び声がその女のものかどうかはわからない、女はちぎれた腕を反対の手で持っている。暗転。タイトル。
失ったものは、もう戻らない。美しい風景には常に死体を焼く煙が見える、薄汚れた顔の移民たちには祖国がない。美術品を集める、薬を飲む、何のために?それはもう、失われてしまったからだ。似たものはいくらでも作れるだろう、けれど、それはもう違うものだ。
すべては失われる、あっけなく、唐突に。そこに理由を尋ねるのは、あまりに残酷で無邪気に過ぎる、誰が答えられるだろう? 私たちはもうすぐ滅ぶのだ。私だって、いつかは死ぬの。どうしてその意味を尋ねることができる?
私が最初に涙を浮かべたのは、なんということはない、車で林道を走る場面だ。それは、私が見たことのない景色だった。なのに私は、それをとても懐かしく思った。それだけで充分だった。
フィルムが回る、流れていく、もう二度と会えない。さようなら。
原作本。実は映画と正反対のことが描かれているのは秘密だ!
- 作者: P.D.ジェイムズ,P.D. James,青木久恵
- 出版社/メーカー: 早川書房
- 発売日: 1993/10
- メディア: 単行本
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